• 多くの人がややこしいと思って、遠ざけてきた問題を文字通り直視した作品。人々の語りから解きほぐすことで、公式にはないはずのものを、そして目に視えないものを確かに「そこ」に存在させた。

    石戸諭ノンフィクションライター
  • 差別を「描く」とき、差別言動の場面だけが切り取られれば、差別の拡散になる。そうならないためにはじっくり丁寧に描く必要がある。だからこそこの作品は長い。そしてそれは、映画館で観る映画という手法だからこそできることでもある。
    差別を「観る」ことは、それを追体験することでもある。観終えた後は頭も身体も大変に疲れ、モヤモヤが残る。そこに部落差別の現実がある。

    内田龍史関西大学社会学部教授
  • 被差別部落は、なぜ残ったのか。中世から現代に至るまでの共同体の歴史をたどりつつ、さまざまな立場の人びとが、自分と部落を語った傑作ドキュメンタリー。

    角岡伸彦フリーライター
  • たがいに分かり合えない、それでも分かりたい、という想いの結晶が、きっとこの映画なのだ。

    小林エリカ作家、マンガ家
  • 差別、運動、生活の話を、泣いて、怒って、微笑んで、ときには大笑いして語る姿をみて、人間の深さ、複雑さをうかがい知ることができます。
    この映画を通じて、部落問題をめぐる当事者たちに出会ってほしいと思います。そして、新しい考え方を得たり、ほんのわずかでも行動を変るきっかけになったりしてほしいです。それは、私が調査を通じて経験したことと、似ていると思います。

    齋藤直子大阪教育大学 特任准教授
  • 部落について、たくさんの“私”たちがスクリーンのこちらに語りかけてくる。差別されてきた私、差別してきた私、映画を作る私。映画を見ながら、はたと思う。俺自身は果たしてどうなんだ? 自分の腹の奥底にあって見ようとしなかったものを鷲掴みにして叫びたくなる。これは世の中のあらゆる差別や、偏見から来る不寛容さを見事に実在させた凄まじいドキュメンタリーだ。

    白石和彌映画監督
  • 私が住む東京・練馬区にもかつて被差別部落があった。漫画家の白土三平はその体験から『カムイ伝』を誕生させた。私のテーマである暴力団も、被差別部落や貧困と密接な関係にある。なのに原稿で被差別部落問題に触れるのを躊躇してしまう。抗議も糾弾もされていないのに。私の中に部落差別が存在しているから恐れるのではないか。私は本当に差別をしていないのか。何度も考えさせられた。

    鈴木智彦フリーライター
  • いま、それぞれの立場に置かれた人間たちの「部落」をめぐる朴訥な語りと、過去の資料を読み直そうとする眼差しに支えられたひとつの映画によって、学びの機会がやわらかく開かれている。
    わからないからと避けてきたその扉を開くと、そこには、「私」に向けられた問いが待っている。
    ともに、学び始めませんか。すこしでもマシな未来のために。

    瀬尾夏美アーティスト/フィールドワーカー
  • 複雑だと思われがちな部落問題の歴史を追っていくと、その道のりがまさに現在の自分の目の前に通じていることに気づく。眩しいほど青い空の真下で。

    ダースレイダーラッパー
  • 具体性がないまま膨らみ、実態を確認せずに強い拒否反応だけが生まれる。
    それは、今、この社会のあちこちで起きていることではないか。
    歴史を知ると、強烈な問いが現在の自分に向けられる。

    武田砂鉄ライター
  • 部落問題は話題にしづらい。しかし、この映画に出て来る人たちは、みんなよく話す。明確な答えがあるわけではない。だからこそ、観る者は「はなし」に加わり、差別を乗り越える共同作業に誘引される。新しい地平を開く傑作だ。

    中島岳志東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授
  • 「私のはなし」をする人たち。当たり前だけどみんな1人の人であり、それぞれの話がある。それを見つめて聴き、私なりに感じる。ただそれだけ。そして「ただそれだけ」がむずかしい社会にわたしたちはいる。
    でも聴くことは効くこととも言われる。自分のなかの何かが変わるかもしれない。

    坂東希大阪大学特任講師
  • 「寝た子を起こすな」という言葉。何も教えなければその事実を知ることはないのだから黙っておけという「解決策」のことだ。
    しかしそうはならなかった。現在もあらゆる差別や偏見、ヘイトは何も知らないからこそ起きている。だからこの映画は「時事映画」でもある。

    プチ鹿島時事芸人
  • この映画は「部落差別はこんなに悲惨だ」とか「差別はやめよう」と訴える作品ではない。差別される人、差別する人、自分は第三者だと思っている人に、ひたすら思うところを語ってもらうだけだ。だから、あらゆる立場の観客を拒まない。でも、見た後には、どんな告発のドキュメンタリーよりも、「部落差別ってマジしんどすぎる」と肌で実感するのではないか、と私は思う。

    星野智幸小説家
  • 被差別部落について当事者である「私」たちと、差別する側の「私」たちの証言。歴史と現状、基礎知識、重要な事件や問題点をがっちり詰め込んだ3時間半。次世代の「私」たちが歌うブルーハーツ「青空」が未来を見上げる。
    屠場をめぐる映画が上映中止になった満若勇咲監督が作り上げた必見の映画だ。

    町山智浩映画評論家
  • タブーを撃つ、大胆な切り込み。いたずらに問題を再燃させないための細やかな配慮。優しさ。TED以上の情報提示力。構成の妙。画面に息づく、取材に応じてくれた方々へのまっすぐな尊敬と愛情。驚くべき総合力の傑作だ。
    観客の理性、感情、判断力、すべてに訴えかけ、複雑に絡まりあった問題の核心に連れていってくれる。自分が何も知らなかったことがしみじみ分かった。

    三浦哲哉映画研究者
  • 地域づくりのワークショップをしていると、たまに「部落のはなし」が出る。しかし、根掘り葉掘り聞き出していい雰囲気ではない。だから、気になるけど理解が進まない。
    この映画はそれを「私のはなし」として聞き出してくれた。おかげで理解は進むが、同時に新たな問題意識も生まれる。

    山崎亮コミュニティデザイナー